幼馴染
ただのみきや

冬は突き放すような抱擁
軽くドレスの裾を振るだけで
白い吹雪が真昼を閉じ込める
冬は火傷するほど冷たいキス
サイドミラーの氷を指先で落とすと
風の中 君の声が聞こえてきた

子どものころは本当によく一緒に遊んだものだ
友達がいなかったわけでもないのに
記憶に残っているのは不思議と一人
あれは4歳の頃だったか
小さな雪玉を転がして だんだん大きくなって
やがてどんなに力を込めても動かないほどになり
たった一人グラウンドの真ん中に立っていた
その時 吹雪に全ての感覚が包まれて
君を感じたのだ

頬は真っ赤に焼けて
足の指はしもやけになって猛烈に痒かった
それでも飽きもせずに毎日遊んだものだ
そりすべりにミニスキー雪だるまに氷柱とり
君が来るのが待ち遠しかった
クリスマスにお正月
あの頃は楽しいことでいっぱいだったから

それが今ではどうだ
天を見上げては雪の労苦に文句を言い
財布を覗いては冬の出費に頭を抱えている
なんともつまらない大人になったものだ

けれども僕が大人になったから
君も大人の魅力で誘うようになった
痛いほどに澄み切った濃紺
星たちの囁きが共鳴する夜に
突風の哀歌と白いベールの舞踏に囲まれて
群れからはぐれた一頭の牡鹿となる白昼に
そっと振り向き 微笑む
ああそれは両天秤の誘惑だ
生と死の境へまで踏み迷わせる

君は全く君のまま
あの頃と変わらない
変わってしまったのは僕だけど
正直勘弁してほしい
君が微笑むと町中が雪に埋もれ
君が舞うと道路は何処も大渋滞

だけどこんな恨みごとを言いながら
幼馴染の君のため書かずにいられない
憎らしいけど
愛の詩を



自由詩 幼馴染 Copyright ただのみきや 2012-12-19 00:45:08
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