詩人だから汚れ仕事はしない
紀ノ川つかさ
詩人だから汚れ仕事は
しなくていい
美しいものを
美しいと言えばいい
醜いものを
醜いと言えばいい
それをどうすればいいかなど
考えなくてもいい
詩人は花のようなものだ
ただ咲いているだけだけれど
それは世界のありようを
写している
原発が嫌ならば
嫌だと叫べばいい
代わりに何で発電するかなど
考えなくていい
詩人だから
汚れ仕事はしない
戦争が嫌ならば
嫌だと叫べばいい
異国同士の緊張を
どう解決するかなど
考えなくていい
詩人だから
汚れ仕事はしない
工場で大地が汚れるのなら
汚れた大地に涙を注ぎ
文明を呪えばいい
代わりにどこで
何を生産するかとか
仕事を奪われる人をどう救うかなど
考えなくていい
詩人だから
汚れ仕事はしない
詩人は何かのために
誰かを傷つけることや
不幸にすることを
考えなくていい
ただひたすらその何かのために
叫び続けていればいい
詩人だから
汚れ仕事はしない
それだから私は
詩人と呼ばれるのはあまり好きではない