幸せのゲーム 二編
るるりら

1.ゆきんこちゃん


段ボールに書かれた 真っ赤に書かれたクレヨンの暖炉の炎には 
ぱちぱちと
もえる友情が燃えていた
おともだちの ゆきんこちゃんは 五年生で
なふだにも ちゃんと 【ゆきんこ】と書いてある
わたしは 一年生で ゆきんこちゃんは 五年生
ゆきんこちゃんは 暖炉のほうには 行かない
炎が こわいんだ


初めて つくった 雪だるまみたいに とけちゃうから
一年生のわたしは ゆきんこちゃんに

「夏になったら とけるんでしょ」
二年生になって 春になったときも 道で ゆきんこちゃんに
校門のところであったとき 「そだよ」って ゆきんこちゃんは言った

六月にであったときも「そだよ」って ゆきんこちゃんは言った

七月には 出会わなかった。
八月も出会わなかった。


十一月になって しろい雪が はじめてふった日
ゆきんこちゃんは はずかしそうに 見つかりたいような顔をして
わたしの教室の近くまできた

わたしは知っている 
いつも かくれていた ゆきんこのおねえちゃんを
夏の間も ふつうの六年生だったことを
隠れながら 道を歩いていた ゆきんこちゃんのことを
いつも みつけていたけれど しらないフリしてた

ちゃんと 冬が来て
雪が降る日は 「ゆきんこちゃぁん」って 大きい声で呼んでもいいのに

なにか はずかしくて 
雪の降る日は 嬉しそうな ゆきんこちゃんから逃げて
とおくで笑った 

大好きって なんだか はずかしい
靴箱にあった 雪だるまも
ゆきんこちゃんのしわざだよね
にんげんが つくったものだなんて わたし ぜんぜん しらないよ




2.ハンディキャップゲーム

円卓には シルクハットが置かれていた
レディス & ジェントルマン これから 思う存分飲みましょう
賭け事に 歌に踊り
酔いつぶれる前に それぞれの財布と相談して シルクハットの中に
自分がだせるだけのお金をいれた
賭け事に勝ちすぎた者は ほかの者に見えないように 
そっとシルクハットの中に
お金を落とした 

富める者も そうでないものも スキなだけ遊ぶ
お金は 心で支払う それがハンディ イン キャップ
ハンディキャップのもともとの意味だよと 気取ったキリギリスが 教えてくれた
穴掘りばかりで目の悪い蟻たちは 美人が多くて いい匂いがした
タキシードを着たキリギリスたちは 蟻たちの思いを歌にした
だって こどものころは みんな
同じ穴のむじな 
なつかしいにおいに 歌わずにいられない

こころから歌い
こころから酔いしれても
すべては ハンディキャップゲーム 富める者はやさしく
そうでないものも たやすく生きられる
キャップの中に お金がたくさん ある間だけは



自由詩 幸せのゲーム 二編 Copyright るるりら 2012-12-14 13:23:23
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