シルフィード
いとう


さよならの温度が肌に絡み
満月が揺らぐので私は
消えていったあなたのために
右の頬を撫でてあげる
幾たびも満ち欠けを繰り返すあなたに
満月は寄り添うので
もうそれ以上
満ちることはない

祈らない
微笑まない
誰のためにも

おはよう
おはよう
右の頬を撫でてあげる
ベッドの中で二人
右の頬を撫でてそれだけで満ち足りた二人を
失ったのではない
消えていったのだ
満月を寄り添わせ
肌に絡み
私に寄り添うあなた
だからもう誰のためにも
私は祈らない
私は微笑まない
もうそれ以上
欠けることのないあなたの
右の頬を撫でてあげる
揺らぐ満月を見上げて
右の頬を撫でてあげる







未詩・独白 シルフィード Copyright いとう 2004-12-20 00:33:31
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