死者
HAL

二十歳前後までの人生の幸福とは
花びらのように可愛く
また、はかない
その一方、かけがえのない人を
失った悲しみは強く、また永し
花びらのような幸福は
花びらよりも早く散り
枯枝の悲しみだけが
永く永く残る
それが戦争というものでは
ないだろうか    (17歳の少年兵の残した墓碑より)








死者はまだ生きているとぼくは言う
何を馬鹿なことをときみは聞き流す

死者は見えないが亡霊となって存在する
そのぼくの言葉をきみは嘲り嗤いの無視
もうぼくはきみに伝えたいとは想わない

死者はずっと視ているのだ
自分たちが護ろうとしたこどもたちは
いまどんな風に生きているのかを

この国にあった慎ましさは 謙虚さは 尊さは
彼等が散ったいまどんな美しく咲いているかを

彼等は何を視るだろう
学校で 家庭で 国会で
新聞の一面の記事で
TVのニュースで

彼等は無駄死にだったのかと想わないだろうか
いま彼等のまたぼくらの国の有り様を視たとき

彼等とはだれかはもちろん言う必要はないだろう
またそれを問うものにこの詩は無意味に過ぎない


自由詩 死者 Copyright HAL 2012-12-11 17:42:12
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