『目指すもの』
あおい満月

この血であなたの心臓を突き刺したい
ナイフを手にその背中を追いかける
あなたは急に立ち止まり振り返って云う

刺せるものなら
刺してみろ

わたしはナイフを突き
刺し殴る

かえり血で濡れる身体は
どこまで刺しても
心臓まで届かない



壁がある
どこまでも届かない壁
壊しても壊す程に
壁は高くなる
すんでのところで息詰まる
別の横道を探したら
わたしは奈落に落ちてしまう
かろうじて滴る雨に
わたしはぶら下がる
宙に泳ぐ
身体が冷えていく

**

失神する味があるように

失神させることばがある

わたしはそのことばの呼吸が
あなたの心臓から欲しい

刺せるものなら、
刺してみろ

その声のなかにわたしはいない
わたしはそれが悔しくて
何度もナイフで殴りつける 何度も、何度も

殴りつけたのは
あなたではない

わたしの心臓だった


どんなに血を流しても
まだ壁には届かない

今にも崩壊しそうなのに
わたしはなぜ、
あの壁が赦せないのか


自由詩 『目指すもの』 Copyright あおい満月 2012-12-08 14:23:30
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