図書館の脇の公園のベンチ
rabbitfighter

もう一度あえたらいいなと思う
僕たちは日だまりのなかのベンチに座って
何もしゃべらない
言葉はすでに失われてしまった
もうすぐ思考も
輪郭も失ってしまう
だからもう一度あえたらいいなと思う
何もしゃべらない
光に同期して
質量を捨てて
帰り道
僕は後ろを振り返らない
それが約束だから
だから後ろを振り返らない
タバコを吸ってもいいかな
風下に座るから
自転車とか枯葉とか、もう浮かばなくなった風船とか
言葉はすでに失われてしまった
読みかけの本もはらはらとめくれて
君の指を優しく挟む
図書館のラベル
日時計みたいな、焼却炉の煙突
もう一度あえたらいいなと思う
風は冷たくて
タバコの煙を遠くまで運ぶ
輪郭が綻んで
ベンチの肘掛け
命は隔たりを越えることが出来ない
かわりに一匹の猫が君の足に身体を寄せる
君にあいたい
もう一度だけ
言葉は要らない
それから僕たちは
出会ったこともないのだけれど


自由詩 図書館の脇の公園のベンチ Copyright rabbitfighter 2012-12-08 11:14:32
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