御馳走について
ドクダミ五十号




稲荷寿司と太巻きが

如何に御馳走であった事か

材料は安価であるが

手間は恐ろしくかかる

ハレとケの区別があった時代

日々貧しく忙しく

美味など忘れそうな時に

突然振り下ろされた槌の様だ

食物に愛が有るか無いか

等と考えるならば

即ち俗物は笑うであろう

美味は値段と=だよと

そうか?

インパクトは充分だ

安価な物を鼻で笑い味わってもみない

ブルジョアには訪れない衝撃だ

記憶とは五感それぞれぞれにあるらしい

私の記憶にはこのハレの日の御馳走が

深く刻まれている

愛情は美しく

そして

複数の味を伴い

鋭いけれど優しく

再現を今でも目指すのは

失われたハレを取り戻したいからだろう

永遠に訪れないかもしれないのに


自由詩 御馳走について Copyright ドクダミ五十号 2012-12-05 15:57:25
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