親愛なるものへ
HAL

いま項垂れているきみ
少しだけ顔をあげてみないか

いま立ちすくむきみ
少しだけ踏みだしてみないか

世の中は確かに酷い
世の中はとても苦い

でもね
ぼくもきみと同じだった
だから
きみを分かるなんて言わない

ただね
視線みたいなものを
少し移してみるとさ

立場が違っても
境遇に恵まれなくても
自分が認められなくても

ひっそりとだけど
きちんと生きているひとがいる
力まずに
ゆっくりと静かに呼吸するひとがいる

綺麗事みたいだけど
世の中を支えているのはさ

ほんとうはそんなひとのような気がね
ぼくはするようになった

だからだけれど
世の中はそれほど捨てたもんじゃないと

ひとってだれもかれもがそれほど悪い奴ばかりじゃないと
いまぼくは想えるようになった

ぼくはいまひとを信じてみても
いいような気がする

ぼくはいま世界を愛してみても
いいような気がする

新愛なるきみとたくさんのひとたちへ
多分だけれどぼくは間違ってないような気がする

きっとこの世界にあるたくさんのものを
肯定してみてもいいような気がしている

どんなものにも悲しみの背中はある
どんなひとにも苦しみの傷痕はある

でもそこにいのちの意味ってあるんじゃないだろうか
だからこそ世界をかえる力になるんじゃないだろうか


自由詩 親愛なるものへ Copyright HAL 2012-12-01 14:46:31
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