リサイクルショップとラーメン屋ばかりの町
紀ノ川つかさ

雑然とした東京の
とある駅前の話
そこにはリサイクルショップと
ラーメン屋しか無い
他の店もあるにはあるが
とにかく目立つのはそればかりだ
そして
そこに行き交う人々は
誰もが幸せそうである

ラーメン屋はどこもこだわりの店
個性的な素材を長時間煮込んだ絶妙なスープ
背脂しょうゆ 白濁とんこつ 黄金塩スープ
何でもある
どの店もしのぎを削り
全国から訪れる客で
長い列ができている
住民の舌も肥えていて
味を語ることができる「グルメ」だ

一方リサイクルショップも大繁盛
不要なものは必要とされるものに
安く譲ってあげればよい
これは助け合いであり
実に正しい美しい行いである
住民はだから
他人に優しい人達だ
休日にはフリーマーケットに行って
売り買いして笑い合う人達だ

リサイクルショップとラーメン屋ばかりの町
リサイクルショップとラーメン屋ばかりの町
この町は完璧だ
住民は豊かな味を知っていて
そして暮らしには無駄が無い
でも
この言い知れない不安は何だ?
正しさと豊かさ
目を輝かせ人々は歩く
この不安は何だ?

マスコミは連日 地球環境の危機を訴える
マスコミは連日 人心の荒廃を訴える
マスコミは連日 助け合えと支え合えと訴える
そしてマスコミは うまいラーメン屋を探し回る
そしてマスコミは こだわりのラーメン屋を探し回る
味への理解はお金では買えないから
おいしいラーメンをもっと食べましょう
そして心を豊かにしましょう!

ああ油断のできない世の中だな
もっと考えてもっと研ぎ澄ませろと
押しよせて押しよせてくるのだ
その中に染まって勝たなければ
笑うこともできない
僕達はそんな人間に
なってしまった

雑然とした大都市に
出現したその町
住民は幸せそうに生きている
リサイクルショップとラーメン屋ばかりの町
不幸な僕達の目指す先
リサイクルショップとラーメン屋ばかりの町
不幸な僕達の
行く末


自由詩 リサイクルショップとラーメン屋ばかりの町 Copyright 紀ノ川つかさ 2003-10-26 10:56:35
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