月夜回想
LEO

三日月の晩に 僕は生まれた
細い月の端っこにつかまって
地上に喜び溢れる人の足音を聞いた

半月の晩に 僕は大人になった
半分の僕は もう半分の僕を探した
地上では 止まない嘘に傘をさす人々がいた
路地の片隅には 悲しみを数える花屋があった
もう半分の僕は 渇いた草の上に寝転んでいた

満月を迎える晩に 僕は太陽に焦がれた
太陽を追いかけ 西へ西へと
ただひたすらに 焦がれる太陽を追った
僕は満月を知らないまま 喜びに満ちていた
けれど 半分の僕は草の上に寝転んだままだった

欠けはじめた月に 僕は苦しくなって
欠けるごと 月の欠片を集めた
いろんな色にいろんなものが映った
ある人は重い荷を背負いながら笑っていた
ある人は手を叩いて泣いていた
子供は泳ぎながら歌をうたっていた
猫は鈴をくわえて鼠を追っていた
烏が濡れた羽を見せびらかしていた
骨だけの魚が波うち際で右往左往していた
様々な欠片に苦しみは戸惑いへと変わった

最後の月夜の晩 僕は恋をした
その前ではとても安らいだ
満月を知りもしないのに
恋した君に満月を語って聞かせた
恋した君は満月を知っているのに
僕の話しに黙って微笑み頷いた
何故だか僕は悲しくなった

夜空に月が見えなくなった晩 僕は途方に暮れた
まだ見ぬ満月を見たくて
拾い集めた欠片を並べてみた
何日かして 歪んだ三日月が夜空に浮かんだ

それでも 君は微笑んでいた
 





自由詩 月夜回想 Copyright LEO 2004-12-19 01:12:46
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