raining raining
村上 和

誰もいない夜
深く青い闇を張って
微かな水音
澄ます心もないのに
曇り空の上の星を伝って
願いは まぶたの裏を駆け抜ける

あなたがいない日はいつも
いつも柔らかな雨が降って
か細い声を震わせても
静寂がひとつ
そっと弾けて終わるだけ



誰もいない街
ささやかな居場所に
小さくノラ犬の足音が溶ける
ただ何となく
「会いたいな」と考える
言葉の中を泳いだ少し後の静けさに

あなたを浮かべる日はいつも
いつも柔らかく雨が降って
過去を紡いだ糸の先が
仄かな熱を帯びて
凍える両手に優しく触れる



誰もいない夢
淋しい世界の片隅に
眠った魚のように
横たえ揺られ動かない
破れてしまった約束を
まだ その指に宿したままで

あなたを失くした日はいつも
いつも柔らかい雨が降って
届かない想いを包んだ
水たまりの上
今も 小さな女の子が泣いている


自由詩 raining raining Copyright 村上 和 2012-11-29 01:18:45
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