『鎖』
あおい満月

あたしの爪が赤いのは
マニキュアを塗ったからではなく
あなたの身体を突き刺した血で赤いのだ

あたしはいつも
爪に尖った金属をつけている
あなたとこの身を交わすときは

ある日、
あなたのなかに違う誰かの影を見たとき
あたしははじめて
突き刺したい衝動にかられた

月の光に鈍く輝く金属の爪で
あなたを思いきり殴りつける
鮮血が吹き出しても
あなたの瞳は変わらない
こうなることを
待っていたように



朝、
あたしはバスタブで
あなたの傷をゆっくり舐める
苦しくても愛しいもの
それがあなたという
あたしの子どもだ

金属の爪が錆びている
それはあなたの血潮が
あたしを離すまいと
繋いでいる鎖のように


自由詩 『鎖』 Copyright あおい満月 2012-11-25 10:59:01
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