ホッチキスでとめただけの簡単な詩集、でもそれを君は本と呼んで
るるりら



魚編の漢字が好きだ
目から鱗という言葉が好きだ
逆鱗に触れるという言葉が好きだ
そして わたしの言葉を読んでくれるだろう そんな あなたが好きだ

回遊する魚のように
回して読む 寿司屋のお湯飲み茶碗のように
わたしの世界の温度を確かめるように
わたしは 今日も あなたに届く言葉を さがす


活字にならないで回遊している私の詩のようなものを
あなたに これは 詩集にしたいと 言ってほしい
わたしの本に名をつけるなら「回遊魚」という名前が似合うといった人がいた
言葉が私を水を得た魚にしてくれますようにという 
それは 祈りだった気がして
わたしは あれからというもの 心を栞みたいに薄くして
私の鱗が だれかの 心の底に触れることを 今日も祈る 

昔 わたしの詩のようなものを
わたしの代わりに手作りで装丁してくれた人がいた
それは とても美しい装丁だった
詩の本を出す人のことを詩人というのだよと 渡してくれた

たしかに その本にあったのは わたしの ことばたち
詩集を持っている人のことを詩人というならば
わたしも詩人になったかもしれないけれど
わたしは詩人になりたいんじゃない

わたしは あなたの心の中に 今も挟まれている ささやかな栞になりたい
私は あなたの心の中に 触れることがあるのかが しりたい 
あなたの心の みなぞこに ふれたい
わたしの鱗が あなたの深海に 翻る光がみたい


私は 目から鱗の瞬間を探す
私は わたしの逆鱗に耐える
ホッチキスでとめただけの簡単な詩集 わたしの言葉よ
ホッチキスを がしゃりと留めたなら

さあ 泳げ 





自由詩 ホッチキスでとめただけの簡単な詩集、でもそれを君は本と呼んで Copyright るるりら 2012-11-23 12:01:16
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るるりらの 即興ゴルゴンダ