ひとときの透過
ホロウ・シカエルボク




いま
手にした手紙と
いくつかの
小物の箱
もの言わぬ
昔のわたしの
色褪せた
無垢の記録


捨てられた家で
埃にまみれ
わたしのことを
待ち続けていた
かすんだ
下手くそな文字が
時間を
越えて…


持ち帰っては
ならない
きっと
なくしてしまうから
ここに
置いて行ったのだ
まるで
どうでもいいもののように


早い午後の陽射しが
落ちる庭を見ながら
わたしはすべてを
軋む引き出しに戻し
また
すべてに
鍵を掛けた




今度は
本当に


忘れてしまうだろう




自由詩 ひとときの透過 Copyright ホロウ・シカエルボク 2012-11-23 02:19:13
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