さすらいのフレンチトースト
ブルース瀬戸内

私はフレンチトーストなのである。
有史以来フレンチトーストである。
気の遠くなるような宇宙の歴史が
私が存在する必然性を担保すると
かのデカルトも明言した気がする。

モーニングといえば私、ではない。
私、といえばモーニングなのだよ。
私、がモーニングを司る寸法だよ。
モーニングを司るとは何事なのか。
ディナーすら私の手の内なのだよ。
それがたとえイタリアンであれね。
寂しい思いはするんだろうけども
いいのだよ、そんなことなんてね
パンをこっそりとすり替えてやる。

私はフレンチトーストなのだから
卵やミルク、砂糖の主張は分かる。
でも私はそれらの代弁者ではない。
私の主張はかなりフレンチである。
空間上に潜んでいるフレンチ粒を
効率的に集め非効率的に使い倒す。
その使い様にこそフレンチが宿る。

ちまちましたやり方など望まない。
大胆かつ大胆に、あるいは大胆に
世界を縦横無尽に鮮やかに駆けて
フレンチの王様、おフレンチな方
そんなふうに呼ばれたいのである。
お呼ばれされたいものなのである。

私はフレンチトーストなのである。
それ以上のものではないけれども
下手な謙遜やへりくだりによって
自分で自分を矮小化するのだけは
どうしたって避けたいものである。
なにはともあれ、さあ食べたまえ!


自由詩 さすらいのフレンチトースト Copyright ブルース瀬戸内 2012-11-21 09:25:22
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