つまらないおとこ
三田九郎

牛丼屋のテーブル席に
五十代だろうか
白髪の目立つ
作業着を着た男がふたり
瓶ビールを傾け
手話を交え
語らい合っていた

通勤時
駅のホームで
脚の不自由な
母親くらいの女性を見かけた
歩幅の違う両脚で
杖をつき
一歩 また一歩
電車に乗り込む

目の不自由な
若く小柄な女性と
街中ですれ違った
時々首をかしげ
スティックを左右に振り
路面に当て
急いでいるようだった

自由とか
不自由とか
つまらないことで
頭を抱えている僕には
かれらの慎ましさ
たくましさが
眩しすぎる
羞恥で
焦げそうになる


自由詩 つまらないおとこ Copyright 三田九郎 2012-11-20 00:06:05
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