昼と白
木立 悟
空気のにおいが変わり
熱と衣は円に舞う
夢を盗む夢を見たあと
共犯者を思い出せない
葉と花の足跡
街を分け つづく
はじまりを知らず ただ
はじまりから来たことだけを浴びつづけている
鉄 冬 機械
容赦のない空腹
空をすぎる鏡に
映らないものたち
これが問い これが眠り
互い違いに並べれば
何かが常に
ひとつ欠けている
子供が捨てた花に向かい
真昼は沈み 傾いてゆく
背中を照らす砂塵の径
蝶の模様 目をひたす波
水 草 虹
木 崖 炎
こすれ 混じりあう
音の掻く姿
鉱の泉
報われぬ子の足跡
光のなか 香は減らず
白は白をひるがえす
やわらかな径をひとりゆくもの
水に映る廃屋の窓には
たくさんの手と笑いがあふれ
すぎゆく流れにまたたいている