漂泊者によせて——高校教室
すみたに


コンクリートの湿った空気
充満する教室
チョークの粉漂い
俺の肺を白くする
窓を破ることもない
弱々しい生徒の哄笑が
俺の鼓膜を腐らせる……

その賑わいを葬りたい!
教科書閉じて
怯懦に目を瞑るやつらを
棺桶につめたら
沈黙をもたらす墓を掘れ、
サイネリアの花を彼らに
手向け、線香を焚くがよい!

そこでは微笑みや愁嘆は
浮沈する
浮沈するそれを
槍で突き刺して
黒板を汚す
彼らのきままな人差し指
細く折れつるされた小枝

椅子や机をひっくり返し
散乱する鉛筆に
消しゴム
引き裂かれるノートから
零れ落ちる大量の
環形動物、彼らの腸から
引き出されたサナダムシ

それからの孤絶、孤絶……
俺は教室で放浪した、
狭く短い放浪、果てに臨んだ海
そして書に鉛筆を突き立て
マストとし、帆を広げ漂流した
俺は二度と帰らぬと決意し
二度と閉じれぬ書を開いた。


自由詩 漂泊者によせて——高校教室 Copyright すみたに 2012-11-11 13:40:06
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