ビロードの堅さまで
かのこ

彼女は今も闘っている  新聞の紙面上で  ネジ穴の底で  明けの空に浮かぶ金星と  わたしの目蓋の縁と  夢のなか  彼女は今も闘っている  時計の針の数センチまで  暗い色の塀に  這うように  舞うように  手が届こうと  彼女は今も闘っている

だからわたしも闘っている  チョコレートのお菓子を食べながら  バスに揺られながら  歌をうたい  月に吸い付き  夢のなか  わたしも闘っている  リモコンを手探りに  夜の色を舐めて  「なんで闘うのだろう。」  先生おなかがいたいです  わたしも闘っている

長い目で見れば  たくさんのことがわかる  理由を探してる、の、  かも知れないけど  手は  睫毛は  零れ  また零れ  夜は淋しいのだろうかと  夜は尽きていく  明日を待ち  墜落していく  刹那  闘っていたのか  闘っていたのか  声と声との間で


闘っていたのか


自由詩 ビロードの堅さまで Copyright かのこ 2004-12-17 20:38:59
notebook Home 戻る