虫の音
ぎへいじ

振り絞る様な虫の音の外は雨
空木岳は雪にちがいない

湯に浸かるこの体は疲れていて
もう少しだけ このまま眠って居たいのに
天井から落ちる水滴が冷たくて

まだ羽根を すり合わせている
5回、3回
4曲目は 
夜露に走る 流星の孤独
少し休んで 6曲目は
そうだな

あの夏の不器用者は どうしているのだろか
がむしゃらで
辛そうで 淋しそうに

なんで俺はコオロギなんだ
この別れの季節に
それが霜枯れの草になびく風の音であっても
うまくなった
上手になったぞ と
何度も繰り返し ほめて送ってやりたい


野の花に
雨音が切り裂く寒さに耐えかねて言葉少なく積もり
朽ちてその後に寝覚めた様に語り始める季節の変わり目辺り

少しずつ日射しが強くなる頃

あちら こちらから不器用な子供達の鳴き声が聞こえる季節

今度は大笑いしながら酒を飲む

まだ生きるぞ
楽しみだ


ボイラーが湯を沸かし始めた。
けれども
この温まった心が冷えないように
淋しさが戻って来ないうちに



ねむろう




自由詩 虫の音 Copyright ぎへいじ 2012-11-05 21:54:54
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