秋の恋人
未有花

かき鳴らすギター
踊る君のつま先
私はただ恋の歌を高らかに歌い
きらめく君の瞳だけみつめていた

枯葉の舞い散る
落ち葉のステージの上で
娘たちは恋のステップを踏む

君の黒髪が揺れる
一瞬たりとも目を離すことができない
君の中に燃える情熱の炎
私の心も体も焼きつくしたあの夜が蘇る

どこにも行く当てのないさすらいの旅
故郷を失い歌だけを道連れにここまで流れて来た
ただ心の奥に燃える火だけを温めて
凍える季節を幾度もやり過ごし
悲しみと孤独を抱えて生きて来た

君のためだけに歌おう
炎のように愛し合ったあの夜を忘れはしない
君の瞳があやしくきらめき
悲しみも孤独も全部忘れさせてあげるとささやいた

今はこの恋のために命を捧げよう
己を鼓舞するように声を張り上げて歌う
例えそれがつかの間の恋だったとしても
あの熱いときめきだけは真実だから

かき鳴らすギター
踊る君の指先
東から来た黒い髪の乙女よ
私のためだけに踊っておくれ

どうか太陽が大地に沈むときまで
愛している永遠に
私だけの秋の恋人よ





自由詩 秋の恋人 Copyright 未有花 2012-11-05 08:37:38
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