降り来る言葉 XVⅢ
木立 悟




ふくらみを抱いたふくらみの横で
かがやきの子はじっとしていた
青しか見えない青の下
息のような明るさの下
午後のふりをした午後のあつまり



誰が造ったのか忘れ去られた
岩の寺院に冬が来ていた
灰と銀の油彩の光が
崖を静かに照らしていた



水かさを増す空を飛ぶ
線の鳥 文字の鳥
波に浮かぶ傷の鳥
青と鈍の目を漂う鳥



兄弟たち 姉妹たちの歌が流れていた
鍵を持っているのに家に入れず
子は分かれてゆく雲を見ていた
手は泣いていた
雪は泣いていた
土の上の光が
滴を受けとめた



触れたことがあるはずだった
どこかにあるのかもしれなかった
ほどけてゆくらせんの連なりの羽
手をすりぬけては土に沈む火
ふるえに消えるふるえの姿に降りそそぐ
まだ見ぬ声のようだった



長い歩みのなかの一歩が
荒れ地をざくりと踏みしめたとき
なにもかも貫き そびえるものたち
どこまでも伝わりつづける翳りの歌
滅びていったかたちが溶けあい
手をつなぎ手をつなぎ起き上がる水の輪



異なる色は紋にひろがり
もう戻っては来ないかもしれない
原の双子
光の双子を見つめていた
ほどけてもほどけても降りそそぐ
源の歌を見つめていた








自由詩 降り来る言葉 XVⅢ Copyright 木立 悟 2004-12-17 13:42:59
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