うたたね
そらの珊瑚

秋の
おだやかなひだまりを選んで
猫が
優しいけものの形で眠っている
堅いボンネットの上で
その寝顔はとても気安く
しばし駐車場で私もうたたねをする

ほんとの君の正体は
西方白虎だと
知っているのは私だけ
ほんとの自分の正体は自分にだけはわからない

レテのほとりで
うたたねの投網をあやつる者がいる
網にかかったものは
牙を抜かれて
抗うことさえできずに つかのま眠る
まぶたに降りた 
にごりを含んだ うすかわが
溶けてなくなるまで 
このまま猫でいて 人でいさせて

私の正体はいったい何なのだろう
それは私にだけ知りえないこと


自由詩 うたたね Copyright そらの珊瑚 2012-10-24 08:59:26
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