うたたね
そらの珊瑚
秋の
おだやかなひだまりを選んで
猫が
優しいけものの形で眠っている
堅いボンネットの上で
その寝顔はとても気安く
しばし駐車場で私もうたたねをする
ほんとの君の正体は
西方白虎だと
知っているのは私だけ
ほんとの自分の正体は自分にだけはわからない
レテのほとりで
うたたねの投網をあやつる者がいる
網にかかったものは
牙を抜かれて
抗うことさえできずに つかのま眠る
まぶたに降りた
にごりを含んだ うすかわが
溶けてなくなるまで
このまま猫でいて 人でいさせて
私の正体はいったい何なのだろう
それは私にだけ知りえないこと