旅の果て
木の若芽

「旅の果て」
              木の若芽


寒さをこらえて目覚めたら
そこは雨けむる高原
陽とともに雨音は鳥たちのさえずりに変わり
澄んだ空気はますます清澄に
いきいきと流れ始めた

やさしい やわらかい ゆたかな
落ち葉と朽ち木と苔の大地を
恵みというほかなんと称えよう
そこから伸びそびえる大木たちも
やさしいなつかしい姿で
ようこそと声かけてくれた

くずれてゆく天気の下でも
草木のたくましさをいつもと違う姿に感じる

近づいてくる
今までとちがう
もっとはるかでたくましくたしかな
地球の内からの声が
背筋おののかせ
ほほ笑みが少し緊張する
近づいてくる速さがましてきた

地球の秘密をしみこませた
冷たく美しい岩の裂け目に
わたしは吸いこまれていった
消えてしまえと思った
だが通り抜けてしまった
放心していると太陽があらわれた
わたしはすべての力を棄てて
岩に横たわり身をゆだねた
わたしは大地のものです
自然のものです
宇宙のものです
わたしはいつかわたしではなくなるでしょう
そのときは至福に満ちて
この地球の秘密のなかに吸いこまれ消えてゆこう



自由詩 旅の果て Copyright 木の若芽 2012-10-22 10:10:28
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