わたしたちは羊毛となり
刈り揃えられ、緊密な綿となり
寝具に仕立てられ
糸の切れた操り人形のように弛緩した
あなたの身体、あなたの寝息
あなたの得体の知れない熱を読む

わたしたちは雲となり
雲を呼び、重なり、より緊密な雷雲となり
毛布へ逃げ込んだあなたの
いつか失くしてしまったフォークが
空から街へと、傷をつけながら落下し
あなたの枕へ突き刺さる

わたしたちは冬となり
爪の縁に、あかぎれをつくり
あなたは最愛の人の頬をなで
硝子のような目の内にある
あなたを模った氷像が溶けてゆくのを見つめる
瞳孔が、緊密に収斂する

あなたは今朝、旅立つ
皿の上には、ほんの僅かにパンを残し
緊密な体温と、緊密な約束だけを持ち出して
あなたは玄関で小さく手を振り
今年初めて、吐く息の白さに気付く
街にはまるで、パイ投げが始まったみたいに
賑やかな雪が、降っている