紅葉
ぎへいじ

葉は大きく強い自分を誇らしげに自慢していた

しかし親の細く貧弱な幹の太さを知ると

風で飛ばされ無いようにと力の限り握り続けるその親の姿が情けなくて

父を軽蔑した



細い葉は 多くの兄弟と幸せを分け合いながら暮したが

親が大切なのは兄達だけと疑い

冷たい雨に打たれても
叩き落とされるものかと
強く握り合うその手が 
すべて偽物に見えて


母の愛を振り払った



季節は下流へ 下流へと流れて

風は緩やかに水に呑み込まれると

気泡をあげて空へ戻され
新しい風に


波紋の影を残して再び渦の中へ押し込まれ
秋は紅葉と共に深く濃くなっていく



あの日



広告の裏に書き残された平凡な詩

子はいくつになっても 親を越える事は出来ないと 知った


破り捨てた
黒く くすんだ自分のノートの燃えかすにさえ

親から教わった文字の葉が残っていたのを覚えている

忘れ去った記憶もまた
忘れたのではなく
溶け込んでいるだけで再び言葉になるのを 心の中でいつも準備してくれているのだと

今日、私は


あの日と同じように

老木の根元に腰をおろして静かに抱きしめ
抱きしめ合いながら 揺れる紅葉を見つめている






自由詩 紅葉 Copyright ぎへいじ 2012-10-21 09:43:54
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