冬の朝の畳
そらの珊瑚

家の中の草原です
それは
冬の朝であっても
凍らない草の原

人に踏まれて
煙草の焼け焦げをつけられ
とうに瑞々しい緑は失われ
白茶け くすんで 擦り切れている

それでも私は草なのです
今もこの身体の中に
おひさまと風を宿しているのです
かつて小さな虫たちが
私の葉陰で眠ったように
今は人が私の上で
安らかな寝息を立てています
紙の扉の向こうは
すっかり夜が満ちていて
月など出ていることでしょう
月は欠けて満ちるけど
人は欠けてゆくものを取り戻すことはできません
かつて小さな布団を真ん中にして
みっつの布団が敷かれた草原に
今はただ人ひとりが眠っています

冬の朝の畳です
人が眠った布団がじんわりと熱を放ち
私はほのかに温かい

私は息をしています
私は生きているのです


自由詩 冬の朝の畳 Copyright そらの珊瑚 2012-10-20 07:37:48
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