洗濯物は乾かない
梅昆布茶

煙草をすっている間考えたんだ
天気の良い日ばかりでは無い事を

世界はちょうど良い硬さでバラバラにならずに済んでいるが
手綱を緩めたら僕をおいて走り去ってゆくことを

ちょうどバランスのとれた処で暮らさなきゃ駄目なんだってね
カウンターでマスターのブルースの薀蓄を聴いたりするのも
もちろん素敵なんだけれどもでもね

会津の銘酒が美味いこととはあまり関係なく動いてゆくことも
たくさんあるって事を

欠落を正当化して生きてしまうのはまずいんじゃあないかなんてね

言葉で的確に表現できないものが沢山ありすぎてときどき
とても悲しい気持ちになってしまうのだけれども

何かを描くことはスーパーコンピューターの3D能力でも
間に合わないんじゃないかと思うんだ

僕のようにいつも洗濯物を部屋干ししてすましてしまう人間には
気づかない優しい季節の風があるっていうこと

それの色や匂いや季節の野菜の歯ざわりの音やら手触りを
うまく生活の中で誰かに伝えてゆけたら良いかなって思う

たまたま仕事が空いてしまって明日は休みなんだ

給料日前でチューニングの狂ったギターを修理に出すお金も無いのだけれど

それでも誰かにメールを受け取って眉をひそめてもらったり
おいしいインスタントコーヒーを淹れてミルクとのバランスを考えたり
ナウマン象の愉快な曲芸の夢をみることだってできると思うんだ

にんげんの赤と緑と青の感知能力の混乱が
色覚異常になってしまうのかもしれないがそれでも怯えないで
色を見分けてゆきたいと思っているんだ

朝飯を作る間に洗濯機をまわして
自分も世界もぐるぐる廻って

つい値段で買ってしまった白菜の白さに
ざくりと包丁を入れて
一日をはじめようと思うんだ








自由詩 洗濯物は乾かない Copyright 梅昆布茶 2012-10-18 18:20:11
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