ホスピタル・サーキット
るるりら

もういちど ちゃんと 笑って
アップルパイの焼ける 甘い匂い
おおめにふるったシナモン

ふれていたいのは 痛いとこ
こねていたいたいのは やわらかなとこ
アップルバイが焼ける匂いのする三丁目の角

病院街にある喫茶店 わたしの担当はアップルパイを焼く係
毎朝七時には焼きあがり
あとは ひがな一日 自慢のパイを客にすすめる

あなたの痛みが鎮まることを口にしながら
わたしの痛みにも打ち勝つ心を乞いながら
こねていたいのは やわらかなパイ生地

不安と恐れの中で救済を切望する人の交差点
成功の日の中の あなたの恵みではなく
失意のときにこそある あなたの手に
温かく もりつけられた 焼きたてのアップルバイ
病院街の真ん中で
自由を勝ち取るために耐える心を願うほどに焼ける
林檎の匂い
自分のしこんだ毒入り林檎を食べても 魔法はとける


ホスピタルサーキットのフラッグは
林檎の匂い
ねぇ もういちど 
ちゃんと笑お
シナモンみたいに





自由詩 ホスピタル・サーキット Copyright るるりら 2012-10-18 11:52:40
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るるりらの 即興ゴルゴンダ