森を求め
木の若芽

「森を求め」
            木の若芽

街を行きつ戻りつ
毎日歩いているにつれ
ここがうっそうとした森に見えることが
ふと 起こるようになった
ビルの壁の連続は
薄暗くしめった木々の幹の連なりと化し
音と排気のたれこめた空気は
もやのような木々の呼吸と化す

ああ街にないものを願い求める
深層意識が夢見させる幻だと気づくのは
その錯覚のうれしさに無防備になって
やぶの中にひそむ森の恵みを探すように
扉を開けたとたん現実に戻って
なにを言うべきかわからなくなるとき

街に森を探し幻を見てしまうのは
どうしようもないわたしの習性となって
毎日を楽しくもするし惑わせもする


幻はしょせん幻
でもそれが愛するものの姿をとっていたら
その幻を信じてしまう
だから
幻の森と木を
無邪気に喜びかけよっていく


森と街をゆれている
どうしようもなく なるがままに
境目のないぎりぎりが緑なしている



自由詩 森を求め Copyright 木の若芽 2012-10-13 14:35:18
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