一昨日の私は明後日の空を想像できない
かんな
積乱雲が雨を降らせる。
空が好きだな。雲が好きだな。それを映す
水面が好きだな。言い出したら霧を見つけた。靄も好きだ。
雲の根源は地上に流れる水にある。
葉の裏から出た水蒸気にある。
空が私を抱くまでには時間がかかっただろうか。
それともあっという間か。
カンバスに空を描くのが好きだな。一面の青が好きだな。
白い雲も好きだな。空をシャッターが切り取る。その
切り取られた空を電線が切り取るのが好きだな。
その片隅でカラスが鳴くのが好きだ。
毎日同じ空はない。毎日同じ私はいない。
昨日の私は昨日の空が好き。今日の私は今日の空が好き。
一昨日の私はきっと明後日の空など想像もできないくらいに小さい。
私は来月で二十八になる。
その事実は常に明日の空を大きくする。
少女と女性の間にある壁のようなものが好きだ。
それが取り払われる瞬間が好きだ。殻を破った感覚が好きだな。
十八で私は殻を破った。二十でまた殻に包まれた。
君は殻の繊維ひとつひとつを剥ぐように接して私を愛した。
愛とはなんだろう。という疑問を抱えている人が好きだな。
なんだろうね。と相槌を打つひとが好きだ。
低気圧が風を吹かせる。流れていく空気が好きだ。
そう気づけば答えが君にあった。