第一回バルクメール選手権
がらんどう


近年、ネット環境の普及にともない、ネットでバルクメールを送信する人が増えてきました。
そこで、出会い系サイト協賛によるネット上でのバルクメール・コンクールを行い、それにより技術の向上、感性の広がり、人との交流を目指します。


<作品名:最近どうしてるかな?>
最近メールないけどどうしてるの?
元気してる?
暫らくあってないけどまた逢いたいネッ(^-^)/

かおり

<評>
これなどがごく一般的なタイプのバルクメールといえるであろう。
率直に言ってオリジナリティーが感じられない。
そもそも、この「かおり」という人物のキャラクターが作品から見えてこないのが欠点である。


<作品名:宛先が違うよ(笑)...私はミカ。>
>ちぃ〜す!おれっち、ヨド君だよーん!コンビニの彼氏と別れたんだってね!
>ところで最近なにやってんの?俺も今フリーだしさあ、暇だったらメールして!
>
>
「誰?」とか思ったけど、丁度いま退屈していたので返信をしちゃいました!
(間違いメールなんか滅多に来るもんじゃないし)
う〜ん、誰に送るつもりだったのかな?頑張ってね〜
彼氏と別れたばかりってのが当たってたから、少しドキッとしちゃいましたが(汗)
ちなみに私は23歳だけど、よかったら何歳なのか教えて下さいね〜!

<評>
これなどは相当に技巧的な作品である。
間違いメールに対する返信というのはよくある設定であるが、ここに「ヨド君」という第三の人物を配置することによって、その間違いメールにリアリティーが付加されているのである。(「間違いメールなんか滅多に来るもんじゃない」と自己言及することによって、逆にそのリアリティーが増していることにも注意しておくべきであろう。)
更に「ヨド君のメール中の彼女」と「ミカ」、「ヨド君」と「ミカのメールの受信者」がそれぞれ重なり合うことによって、ある種の関係がすでに成立しているような幻想を与えるところが巧妙である。


<作品名:お忙しいところすいません^^;>
最近何度も知らない人からのメールが多いんですけど、私のアドレスどこで知りました?^^;
もし良ければ教えてくれませんか?
ちなみに貴方様からは4日程前に空メールでアドレスしか載っていませんでした。
参考までに私は歳が26歳の沙耶香といいますがご存知ではないですよね?

<評>
この作品も設定的には上の作品と似ているが、より素朴な構成となっている。
自己紹介に当たっても「歳が26歳の沙耶香」という表現がこなれていないように思われる。普通ならば「歳が26歳」とだけ書いたりはせず、もっと別に書くべきことがあるはずである。それが「出会い系の書き込みへの返信」というスタイルであるならばそれでもよいが、「間違いメールへの返信」であるならばそれは不自然なのである。


<作品名:生きてればいろいろありますよねぇ〜!!>
セックスフレンド希望のユンファといいます。まだ間に合いますか??あっ、ユンファっていっても、日本と韓国のハーフなんで、日本語ぜんぜんOKです(^-^)簡単に自己紹介しますねっ!名前は伊藤ユンファ、22歳、セックスフレンドは今まで4人いました。夜はえろえろで、ふぇらとか自分からも上に乗りたがりだけど、これでも普段はいたって普通なんですよっ(^o^)仕事は歯科助手をしています。3サイズは上から88/62/86のEカップです。ホテルと家だったらどっち派ですか?私はできればホテルかな。一度試してみて相性良かったら、家で自慢の韓国料理ご馳走しちゃいます☆あなたが一番会いやすい場所教えてください♪♪あっ、写真見てみますか???

<評>
この作品の秀逸なところは、まずそのタイトルである。「生きていればいろいろある」だなんていきなり言われて心を揺さぶられない人間がいるだろうか。更に「日本と韓国のハーフ」という人物設定の巧妙さがある。あまりありそうにない設定がかえって読者の興味をかき立てるのである。だが、この巧妙さは「あざとさ」と表裏一体であり、人によってはそのあざとさだけで拒否反応を示すかもしれない。


<作品名:はじめましてなのです♪>
はじめまして☆平田と申します。えーとですね、
以前メル友募集してましたよね??その書き込みに
とても興味を持っててアドレスを控えてたんです。
ちょっと前の書き込みでしたけど。
ぜひぜひ仲良くなりたいと思ってるんです☆

最初ですので、自己紹介を致しますね☆
平田智美、22歳でフリーターをしております♪
趣味は旅行と読書で、好きな作家は筒井康隆さんです。
筒井さん、初期の不思議な実験的な短編が
特に平田のお好みでございます☆

平田のスリーサイズなんかはまだ言わないほうがいいかな(笑)?
そんなワケでして、平田、お返事待っております!
趣味や、どこに住んでるのか教えて欲しいです☆
あ、あと何て呼んだらいいでしょうか?
平田のことは、平田と呼んでください☆

<評>
この作品はまず「ちょっと前の書き込み」に対して返信している。それがこの作品の第一の技巧である。受信者がその書き込みを忘れている可能性を考えるという反応を期待しているのである。
自己紹介の書き方も自然で上手い。初対面でスリーサイズなどを書くというのはいかにも不自然であり、この作品のように趣味から語りはじめるというのが自然であるだろう。
好きな作家が筒井康隆というのもなかなか上手い選択である。筒井の「初期の不思議な実験的な短編」を好きというあたり、いかにも読書好きという印象を与えている。これが村上春樹あたりが好きと書いていたら、まったく違った印象になったはずである。



散文(批評随筆小説等) 第一回バルクメール選手権 Copyright がらんどう 2004-12-15 14:11:46
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