エスカレーターを駆け下りようとする馬鹿なやつ
ただのみきや

国々は歴史というエスカレーターに乗って
ゆっくり 未来へ向かって登って行く

いつまでも いつまでも
赦すことのできない憎い後ろ姿が見える

煩わしい声に ふと 振り返ると
遠い過去から睨み続ける視線がある

どちらもそこに立ち止ったまま 距離は縮まらず
国々を乗せたままエスカレーターは登って行く

あっちに登って行くことも
そっちに降りて行くことも
出来ない理屈はないけれど
そこに根が生えたように動かない 動けない

誰かが誰かの加害者
誰かが誰かの被害者

憎々しく誰かの背中を見つめながら
「おまえのやったことを決して赦しはしない」

 同じように

険悪な視線を感じて振り返っては悪びれもせず
「理解できない それは過去の話だろう」

登りのエスカレーターを急いで駆け上るやつはいる
だが駆け下りようとするやつはまずいない
そんな無駄でナンセンスで馬鹿みたいなことを
しようとするやつはいないのだ

だけどどれだけ過去の問題に手間取ろうとも
未来へ向かっていることには変わりはない
急いでみても未来は決して早くは来ない

カンフー映画 中華料理 チャイナドレス 二胡
 昔から好きだった が
最近ニュースで見聞きする中国は嫌いだ

だけどもしわたしが中国人だったなら
それ以上に日本が嫌いだったことだろう
そうなるように教えられて育つのだから

エスカレーターを駆け下りようとする馬鹿なやつを
人は必要としているが 国家は必要としていない


自由詩 エスカレーターを駆け下りようとする馬鹿なやつ Copyright ただのみきや 2012-10-01 23:54:10
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