無題
c


なんどもなんども呼び止められている
きみたちが過去の話ばかりしているからだ
なつかしい
という言葉しかしらないみたいに
記憶をひっかきまわして
僕のからだをおきざりにして
めがねまで持っていってしまったら
僕までなにもみえなくなってしまうよ




あなたが僕を解説する
その滑稽さにふふふとわらう
煙がふわりと消えるのを
あなたは見逃さずにいたいの
写真家になったらいいのにな
僕は僕の秘密にやさしい
映し出せるものだけを切り取って貼って
また僕にみせてくれよ
ふふふと笑ってあげましょう




大量の絶望以外出入り禁止
落下しては
うしなう(8マス戻る)
僕の好きだった夕方は
スペイン坂から転がり落ちて
道玄坂の風俗店に誘拐された
うしなうものは決まって僕の愛したもの
気に入らないから水槽ごとひっくり返して
みずびたしの夜に
魚は自由の喜びを尾びれで表現した
(僕には言葉を選択させて
触れなかった夕日
つかんで消えた月
星はいつまでもそこにいて

うしなう
うまれる。






自由詩 無題 Copyright c 2012-10-01 21:28:13
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