大僧正 疾風怒濤するの巻
コーリャ

大僧正は空になった蜂蜜の壺でさえも大事にとっておいて、名もわからない真っ白な花を一輪、そっと刺しておくような優しい方だが、お金は貯めるし、奥さんはたくさんいるし、けっして、聖人ではなかった。

大僧正は空に羽ばたくことができた。翼があったからだし、魔法もつかえるし、なんだったら、パラグライダーを操ることができたが、神様とかべつに信じてないし、聖書とかもべつに煙草の巻紙にしちゃったりするような、ダメプリーストだった。

それでも空が真っ赤になりすぎて、人々が怖がったときは、どうにかしようとし、皆の衆、聞きたまえ!これは世界の終末ではないのだ。おそらく西のトマト畑でヴァンパイアたちが暴れておるのだ!静まりたまえ!、とかって雄々しく叫ばれた。

でもギャグはウケないし、べつに皆の衆は静まらないから、大僧正はますます自信をなくされ、家にひきこもって、本当は好きでもないゲーテとか読んで、疾風怒濤のときのポーズを考えて独りでウケたりされてる。

なんでもその時は弟子のひとりが金閣寺を燃やしちゃうみたいな夢をみておられたらしいが、そういうところではわりと大僧正はインスピレーション派だ。あるひとりの弟子が鶏をぜんぶKFCに売ってしまい競馬場にいって有り金すべてすってしまったのに、これが真理だ!と叫びながら道場のど真ん中で疾風怒濤のポーズをしているというのだ。

普通の戒律てきには死刑だ。大僧正は惑われた。とりあえず、うむ、ついに、シュトルゥムウントドランクゥウ(声真似)を体得したか、とかギャグを飛ばされるが、やはりウケないし、ていうか元ネタがわからない。魔法をつかったように皆の衆はとても静かにちょっと冷ややかな目でことの成り行きをみまもっている。大僧正はため息をついたあと。石のように沈黙して、わざと鹿爪らしい顔をして、自分の室から白いお花を一輪もってこられ、罪人の頭のうえに、ぽんと載せてあげて、それでお終いにしたのでした。




自由詩 大僧正 疾風怒濤するの巻 Copyright コーリャ 2012-09-28 22:48:17
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