冷めきった紅茶
マーブル

冷めきった紅茶は 
いつも何かいいたげで
それでも冷めきった紅茶は 
口を開こうとはしなかった
枯れ葉がからからと音をたてて
風に蹴られている
茶褐色の湖は冷たく深いな






とんがった葉の先は
よく光る金色のフォークか
足元をまあよく転がって
ブーツにキズをつける
無口な風景
何処を彷徨おうか







ラム酒のような甘ったるく気怠い匂い
思わず噎せ返ったよ
酔い痴れて萎れるコスモスは踊ってばかりだった
無防備に踊ってばかりだった
でももう時間だ
夜はゆっくりねむっておくれ







冷めきった紅茶は
どんどん冷えきる
君に罪なんてないのにな
きっと風景がそうさせるんだ
いよいよ可哀相になったもんで
ミルクを少し注いで
おまえを飲み干した








少しは笑ったかい
冷たかったけど甘くてうまいと思ったよ
七丁目の大通りの公孫樹の並木道
あれは天国の道に思わせる
飼い慣らされた犬が熟れたレモンのように
色づいた絨毯を踏みしめる季節は
もうじき来るはずさ








凭れるベンチは鉄パイプじゃなくて
おんぼろの木製のがいいね
あの公園にあるんだ
よく其処で本を読んだりしてたよ
陽射しはかすかに白くて
雲に隠れたりして霞んでいる
そんなのが好きだなと思う





煙草を吸うのには
勿体ないところだから
ただ眺めて
冷めきった時間に
花を放りなげる
そうして時間は止めていた
冷めきったおまえ
茶褐色の湖は冷たく深い
誰にも知られるな
おまえは一人が似合う
夜はどうか踊っておくれ












自由詩 冷めきった紅茶 Copyright マーブル 2012-09-27 12:16:54
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