ふたりのこども
朧月

この世界の音からのりおくれて
はたして世界に音はあるのだろうか
残らない記憶には意味がない
そう賢者はいった

みてわからんもんは きいてもわからん
厳格な祖父の口癖は
酔えばサイフの中のレシートよりも
軽く風にとんでいくだけのものだった

この手にはなにもない
つかめるものなんてあるの?
いとこが二人目のこどもをうんで
ちやほやされない上の子がきいてきた

こたえは

うまれてしまった

やっとお宮参りをすませたその子は
ああんと顔をゆがめて母親から身をよじった
次の瞬間ほほえんで
納得したかのようにしずかになった


自由詩 ふたりのこども Copyright 朧月 2012-09-26 08:30:58
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