【 嘘つきの国 】
泡沫恋歌
街頭の政治家ポスターに
黒いマジックで「うそつき」と
オデコに書いた者がいる
ほうほう なるほど……
いかにもポスターの男は
嘘つきそうな顔である
ニヤけた善人そうな笑顔が
まさにペテン師面だった
だが しかし……
政治家から嘘を取ったら
何も残らないでしょうが
みんなは知っている
世間に出て成功するのは
頭の固い正直者じゃなくて
柔軟な思考を持つ嘘つきの方
もっと端的に言えば
「正直そうな顔した嘘つき」
それこそがもっとも最強なのだ!
こっそり親たちは
子どもこう教える
「ぼうや、正直はダメよ。上手な嘘をつきなさい」
こんな世間では
正直者は片隅に追いやられて
嘘つきが大手を振って練り歩く
やがて街中に嘘つき共が蔓延して
正直者は嘘つきの言うことを信じて
みんな嘘つきの仲間になっていく
嘘が本当で 本当が嘘になる
真実は数の力で封じ込められた
この国を動かしているのは
政治家なんかじゃない
ただの嘘つきたちの戯言なんだ
ああ この国は病んでいる!