渓谷の一葉
ぎへいじ

通い始めて3年になる

それなのに まだ
一葉の詩も作れないでいる

多くの写真を撮り

数え切れない程の岩や石の曲線を紙に書いたりしたが
学も無く言葉も足りない 私には


ゆらめく水溜まりの
きらめき さえ表現出来ずに鉛筆の芯を折るばかりで
今日もこうして川石に座っているのだ



波を掻き分ける様に 滑って来る流れは

私を下流に押し流す事も

逆らって のぼる事も出来ない石舟の人にする


船上から
渓風に 誘われて辺りを見れば

山の檜や川に遊ぶ魚

時々、私の血で昼飯を済ましに来る虫達まで
ただ石に座っているだけの無能の船頭の私を 滑稽に思っているに違いないと
感じて来るのである

しかし今日は久しぶりに心地良い船旅をした気持ちになっている


心境の変化なのか何故なのかわからないが

影さえが輝いている

こうして愚痴も詩にしたくなるほどだ



さて
私の旅はまだまだ途中

今日もいい旅で ありますようにと一言
言ってこの石舟から降りようと思う





自由詩 渓谷の一葉 Copyright ぎへいじ 2012-09-15 11:22:06
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