つじつまの虹
るるりら

いわれの無い 悲しみは
こどもの頃の 押入れの匂いがするから
布団のすきまに押しこんだ
この目は きっと赤

ともだち
と いう響きの電話の声が
「いまから 出かけない?」と言うなら
それは たびだち

おさない あの日と かわらぬ正直さで
「あそぼ」のこころの車ごと
谷合いの霧の中に つっこめば
もう 押入れの中のことは 思い出せない

霧の中では緑はより深い息吹になって そよぐ
山の中で 霧は雨になり 
にわかに雨になる
雨は豪雨になり 雷鳴を呼ぶ
あらゆる木々を あらゆる土を川を
雷が ゆさぶるから なぜか すべて可笑しい
雷の谷をぬけると 光が満ちてくる

花を探しながら走る車が走っているうちに虹が出る
しかも
二重の虹
くっきりとした虹のほうの色の配列は外側が赤、内側が紫
消えそうなその虹の色の配列におどろく 外側が紫 、内側が赤


家に帰ってくると
押入れの中に まるめこんだ かなしみを とりだす

かなしみは いつのまにか うすらいで 消えそうだ
きえてしまうまえに すっきりと広げ
あたらめて綺麗に 畳みなおすと
かなしみの 輪郭は
いつしか
よろこびを従えている

かなしみとよろこびが
二重の虹のように 
まっすぐに
天へと伸び
まっすぐに
アーチを描いて降りてきて
きのおけない友達同士のように
そっと 寄り添う




自由詩 つじつまの虹 Copyright るるりら 2012-09-12 09:03:46
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