空鍋
乱太郎


逆立ちしたくなって
雲の底をひっくり返して
ごっちゃんですの青い空鍋

てんやわんやのこの前の出来事も
ごっつり煮詰めてしまえば
薄味醤油がたっぷり染み込んで

こってり泣き虫だったあのことは
わさびを少し効かせて
ちょっと辛かっただけと言い訳してみる

空鍋はいつまでもからになることはない
具沢山の毎日を適当に詰め込んで
手に負えないほどの長さの箸でつまんでいく

今日も美味しかったよ

雲にひとりつぶやいて鍋の火を止めれば
少年の時飛び回っていた澄んだ空が
また明日もだよと鍋に蓋をする


自由詩 空鍋 Copyright 乱太郎 2012-09-10 16:01:41
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