♪ダッダダダダッダ、ダッダダダダッダ
じーんせい楽ありゃ ふみしめて〜♪
(山上路夫作詞・木下忠司作曲)
第8647話 電気を帯びた黄門様
〜江戸 清住町〜
徳川光圀 「ふむ、珍妙なものだね。これが噂のヱレキテルか」
平賀源内 「じいさん、触ったらいかんぜ。絶縁してねえからな」
徳川光圀 「絶縁とはまた異な事を申さ!!!」(感電、失神)
平賀源内 「った言わんこっちゃねえ老いぼれが。おーい、連れのじいさんが大変だ!」
助さん 「御老公!」
格さん 「黄門さま!」
平賀源内 「触るな! 帯電、平たく言えば毒を発しちょる。… 御老公?」
助さん 「いや、何でもござらぬ。御老公っ!」(杖で腹など突っつく)
格さん 「黄門さま、お気を確かに!」 (頭巾で顔などひっぱたく)
平賀源内 「黄門さま? もしや…!!!」(俄然わが身を悲観する)
* * * * * *
徳川光圀 「ふぅ、先ほどは往生した。まだ髷が逆立っておる。どれ、ひと風呂」
由美かおる 「キャッ!」(入浴中)
徳川光圀 「これは無礼した。… 先ほどは蘇生の術を大儀であったな」
由美かおる 「いえ、ほんの合気道でございます」
徳川光圀 「おかげで命拾いした。礼と言っては何だが、ひとつ背中でも流してやろう」
由美かおる 「滅相もない御老公さま。いえ、本当にけっ!!!」(感電、失神)
徳川光圀 「これはいかん。おい、誰かある。助さん! 格さん!」
第8648話 田楽を上がった黄門様
〜京都 嵐山〜
徳川光圀 「うむ、やはり田楽は京都嵐山に限るな」
助さん 「やはり江戸とは味噌の風味がまるで違います」
格さん 「やはり水戸とはこんにゃくの肌理がまるで違います」
徳川光圀 「いずこも同じ砂おろしだ。玉が腫れると棹がムニャムニャ」
由美かおる 「まぁ、御老公さまったら生々しい事おっしゃって」
徳川光圀 「わひもこう見えれまらまら現役らはらろほ」
由美かおる 「おほほ、いやですわ御老公さまったらお上手!」(光圀の肩を突き飛ばす)
徳川光圀 「ぅくぇっ!」(気管に吸い込み窒息)
助さん 「御老公!」
格さん 「黄門さま!」
由美かおる 「大変! 毒を盛られたのかしら。お匙、お匙を!」
助さん 「どこのめし屋に匙がおるか、たわけ。この紋所が目に入らぬか!」
格さん 「こちらにおわすお方をどなたと心得る! 恐れ多くも先の副将軍み」
由美かおる 「あっ、そう言えば、こんなのも習ったわ」
(光圀を蹴倒して腹這いにし片羽交いじめで極限までエビ反らせ肩甲骨の間に思うさま掌底突き)
徳川光圀 「ぐふぅえっ!」(田楽発射、呼吸再開)
助さん 「御老公!」
格さん 「黄門さま!」
由美かおる 「解毒の術が効いたわ!」
徳川光圀 「…… ふぅ、この度は往生したぞ。白黒しておると三途の川が見えた」
第8649話 文明開化と黄門様
〜東京 新橋〜
徳川光圀 「うむ、これが陸蒸気か。中もなかなか立派に出来ておる」
うっかり八兵衛 「黄門さま、こっちこっち!」
徳川光圀 「うむ、そこか! 席取り大儀、大儀」
うっかり八兵衛 「いえね、三日三晩並ぶのは構わねえんですが、座ってからが退屈しちまって。全く往生しましたぜ」
徳川光圀 「うむ、大儀であった」
うっかり八兵衛 「しゃっちょこばっていても、こう背当てがあっちゃ座りが悪いし、かと言って不貞寝するには寸足らずと来たもんだ」
徳川光圀 「うむ、そうかそうか」
うっかり八兵衛 「ですからあたしゃ、いっそゴザでも敷いて床に座っちまった方が楽なんじゃないかと思いましてね」
助さん 「これ、八兵衛。くどいぞ」
格さん 「そろそろ時間だ、もう行け」
うっかり八兵衛 「へい!」
* * * * * *
徳川光圀 「えらく騒がしいが、また随分と速いな。まるで飛んでおるようだ」
助さん 「左様でございますな」
徳川光圀 「駕籠と違って上へ下へと揺れぬのも良い。あれは首と腹に悪い」
格さん 「左様でございますな」
徳川光圀 「これが津々浦々へと延びれば、諸国漫遊も夢のように楽になるな」
助さん 「はい、さぞかしお国入りもお楽になりましょう」
徳川光圀 「しかしこう頑丈な箱に詰められ通しでは、旅の空が味わえないか」
格さん 「はい、宿場までの風光が割愛される気がいたします」
徳川光圀 「うむ、旅路を辿れぬ。そこがつまらぬ所だな。そうだ、せめてこれを…」
助さん 「ほお、良い風が入って参りました」
格さん 「これは爽快なゲホ、ゴホゴホ」
徳川光圀 「前で何を燃やしておるゲホゴホ」
助さん 「何でも石炭とか。目が…」
徳川光圀 「これはいかん。息が…」
格さん 「いや、わだじが閉べばじょう」
徳川光圀 「…… ぶう、往生じだ。おや、助さん格さん、顔が黒いぞアッハッハ!」
〜 完 〜