SHOOT-OUT
ホロウ・シカエルボク



ちゃんとロールするロックの揺らぎと、前日の寝不足が連れてくる倦怠、寝床の上でまだなにか、やることがあったはずだと考えるなんのためでもない時間、頭蓋骨の中で次第にとろけていく脳味噌…ときどきこめかみにピストルをあてるやつらの気持ちがよく分かるような、そんな気がするときがある、あれは脳味噌が痒くて仕方がなくなるのさ、俺はアメリカなんぞに生まれなくて良かった、手軽なものが身近にあったらきっと我慢出来ずに使ってしまうからさ、おっと、勘違いしないでくれ、別に死にたいなんて思っているわけじゃない、脳味噌の痒みを止めたいだけなのさ…手元にあるナイフじゃ、きっとそこまで届かないんだ、きっと痒いのはちょうど真ん中のあたりなんだから―伸びた指の爪でこめかみを掻く、そうすれば少しマシになるはずだとそう思いたいのかもしれない、だけど状態は変化したりしない、小手先で出来ることなんてほんのちょっとのことでしかないのさ、ちょっと真新しいことをやってみせることで、そいつが画期的なやり方のように見せているだけなんだ、そんなことをしたって脳味噌の痒みは止まることはない、もちろん、それはピストルで撃ち抜いたからって本当は止まるもんでもない…いや…止まることは止まるけれど―それは少なくとも最良のやり方ではない、簡単だっていうだけで…そう、簡単な手段を選ぶやつが多過ぎるんだよな、だから俺の脳味噌は余計に痒くなる―シンプル・イズ・ベストなんて、あらゆる手段を試してみたやつこそが使える言葉なんだぜ、そこそこのことしかしてこなかったやつが使っていいフィーリングじゃない…つまりさ、そいつはさ、内側からふっ飛ばさなくちゃいけないんだ、脳味噌そのものに損傷を与えないように―その痒みだけを吹っ飛ばすやり方をなにか考えなくちゃいけないんだ、それはなんだろう?ちゃんとロックするロールの揺らぎと、前日の寝不足が連れてくる倦怠、そんなものの中じゃ答えなんて上手く見つけられやしない、だけどそんな不明瞭な状態でもない限り、悪足掻きなんて馬鹿な真似はすることは出来ないんだよな、そう、悪足掻き…足掻くことやもがくことを、醜いと感じる連中がいる、苦境に立ち向かうことやその怖れについて語ることを、愚かだと評する連中がいる…最前線に出ようなんて思いもしない連中さ、絶対に弾が飛んでこないあたりの塹壕にこっそり身をひそめて、ほとぼりが冷めるのを待っているような連中さ、そういうやつらは家に帰ってすごい戦いをしてきたみたいな顔をして嘘八百を話すのさ―つまり、欠伸してられるところに隠れて、徹底的に戦うことを避けているような臆病者どもだ…傍観者的なスタンスに立つってことはすなわち、自分じゃ何もしていないってことの証明だろう、違うかね?悪いけどベクトルが違い過ぎるよ、俺は脳味噌の痒みを取るために、少々強引な展開だって狙わなきゃ生きていけないっていうもんだ、強行突破っていう言葉あるじゃないか、そういうやつらが感覚として理解出来るとは思わないけれども…言い訳しなくていい、大丈夫、俺には分かっているから―さて、ロックンロールはビートを少し速いものに変えた、スコープの中に映る標的は自分の眉間であるべきだよ、つまるところそれがスピリットってやつなんだ、余計な茶々を入れたところで相手してやんないぜ、俺の詳細なカルテを持っているのは俺だけだ、また、そこに書かれた文字を最後まで読むことが出来るのも俺だけなんだ、俺は自分の眉間にポイントを当てて、ここだという瞬間に引鉄を引く…ターン、確かに当たったはずなのにビクともしない、まだ足りないんだ、まだ足りないんだ、弾丸を仕入れなくちゃいけない、一発で綺麗に風穴を空けられるヤツを、強力な速度で真ん中に向かっていくようなヤツを…俺は自分の肉体を梨のように毟り取ってそいつを成型する、前にも言ったように小さなナイフしか持っていないから、出来あがるのには時間がかかる、だけど、その時間だけはきちんとやらなくちゃいけないんだ、やらなくちゃいけないことは分かっていなくちゃならない、それは確実にこれと言えるようなものでなくていい、言葉に変換されないどこかのレベルで蠢いている影でいい、俺は出来あがった弾を込める、スコープを覗いて、ターゲットに狙いをつける、引鉄を引く…ターン……どうだ…………?







やったのか?


自由詩 SHOOT-OUT Copyright ホロウ・シカエルボク 2012-09-02 01:42:53
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