ノート(午後の尾)
木立 悟




そっといじけたような光でいる
まるくまるくなでられたいのに
そっぽをむいて目を閉じて
大きな花の実を食べている



ずっとむずがゆく思っている
ときどき次の次がほしくなる
少し高いところにのぼり
晴れと曇のむこうを呼び
生まれゆく雨のかたちを知る



やわらかな毛に陰が来て
水のにおいを落としてゆく
草の上でからだをよじれば
陽は半透明の空の傘
尾根の近くの頬をつつく



熱は熱から遠去かり
原へ原へと葉の背を歩む
水と銀と青の冠
緑の杯にそそがれる音



光を見つめる光の頬を
歌は静かになでてゆく
花の座には翼があり
こだまをこだまに返しては
粒たちの道を震わせている



灰はどこへいっただろう
ずっとうしろへいっただろう
雨の次がほしくてはずむ
やわらかなやわらかなあつまりは
風におされたくぼみのなかに
水の実を見つけて微笑んでいる








自由詩 ノート(午後の尾) Copyright 木立 悟 2004-12-13 12:15:05
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
ノート