八月が終る
はるな



十八
すべりこむとうめいの音、(僕の)使えないなかみ
まちがい、溶け出した赤い右手と、黄色い耳と、走ってる車の、青白い音と十円玉でつけた引っかき傷がほんとうは気付いてるってこと、
ほんとうはみんな
気付いてるんだってこと

汚れたような顔で立ったり座ったりしてるけど
実際はそうじゃないんだってことも気付いてる

指紋が溶けてしまって(僕は)(君が)わからなくなる

つかえないきみを
置き土産にして
白い空を逃げる
そろそろ喰われてしまうのだ
焼けたひだりの脚と
死んだみぎの脚を交互に前に出すと
景色がかわってゆく
それを
おもしろいような気持で
眺めている


十九
汚れた手で触らないでください汚れた手で触らないでくだ
さい汚れた手で触らないでくださいきれいな指を落として
きたきれいな指を落としてきた手が汚れてとても悲しいで
す手が汚れて悲しく思いますとても悲しく感じました
汚くないと言ってください汚くないと言って汚くないとぼ
くの身体が汚くないよとたくさん言ってほしいです汚くな
いと言ってくださいぼくの思想は汚れてないとぼくの思想
が歪んでないとぼくの手足が汚れてないと言ってください

汚れた手で触らないでください汚れた手でさわらないで汚
れた手で触らないでください汚れた手で触らないで下さい


二十
うそのにおいがする。うそのにおいがする。
うそのにおいがする。うそのにおいがする。
うそのにおいがする。うそのにおいがする。
うそのにおい


とってもいとしいくすり指の長さやだえきの温度をおもいだすとき
はんぶんくらいはしんでいる
のこりのはんぶんを繫げているのも
くすり指の長さやだえきの温度


二十一
祈りを縫い合わせた服を着て
やさしい人を足蹴にしてる
それでもみんな手を合わせ
あなたのことを望むんだ

二十二
青い朝も青い夜も青い汗も
過ぎてしまえば同じようにいとしい
はやくすべてが過ぎさって
いとしいものになりますように


自由詩 八月が終る Copyright はるな 2012-08-30 00:30:53
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