おとうと
夏美かをる

二十五年前のある日
おとうとの幼稚園の授業参観に行った母が
苦笑いしながら帰ってきたことがあった
なんでも恥をかかされたらしい
その日のテーマは
「お友達に手紙を書く」というものだったのだけど
クラスの中で おとうとを含め三人だけ
まだ字を覚えてない子がいて
その三人は 配られた便箋で紙飛行機を作って
踊り場でそれを飛ばして遊んでいたらしい

おとうとは
未だに漢字が苦手で
この間も
同窓会の案内の原稿を
ワープロ清書するように頼まれたんだけど
短い文章の中に誤字が三つもあって
家族中の笑い者になった

そんなおとうとが
最近毎晩 漢和辞典と格闘しながら
チラシの裏になにやらいっぱい漢字を書き連ねている
「へたくそな字」って
私に馬鹿にされても 我関せずって感じで
楽しそうに書いている

おとうとは
もうすぐパパになる


自由詩 おとうと Copyright 夏美かをる 2012-08-27 15:20:34
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