ふと
マーブル


ふと


白い屋上で見えた風船のいろとりどりが 胸に散らばった 
わたしのこころが 無数の風船なら 空でゆめをばら撒くんだろう
ばら撒いたゆめはどこかでだれかに食べられる 仄かな奇跡を贈るように
胸いっぱいの溢れる水色が一度だけ わたしの体に透きとおる
季節はあの雲みたいに 額に冷たく とおりぬける透明な風のようだった

汗ばんだ月が溶けそうだ
涼しい顔をしながら
宙ぶらりんの
不確かな言葉をてらす

ふと


ここにいるよと教えてくれるのは うかびあがる 細い月だったり
信号機の青がみずたまりに映るときだった 足元と空中の憧れみたいだ
力つきたキャンドルは甘く消えた時に燈る あたたかで見えない暗闇の中
わたしは遠のいていてく季節を幾つか数えたら ひらいてみる 淡い暗がりを
きっとあの日のサルビアは 声を聞いていた 物静かに目をとじキーンと澄まして

夜の散歩道オリオンが云った
疎らな呼吸の光り
素足で歩いたら
跨いで星まみれになりなよ


ふと


夜の風景に花びらが舞い降りてきたら あのこの可愛い寝息ひとつが 花びらなのかもしれぬと
そんなことを想像してみたんだけれど そうだったら 一瞬わたしも瞬けるのかもしれないと
硝子の胸の窓にそっと 招き入れてみたいなと思ったんだ てのひらはあっという間に花畑
おやすみなさい と水槽の明かりも落として みんなすやすやすくすく寝息を彩る
波音のリズムで しゃぼん玉をよなよな吹いているのかもしれない


水浸しの夜明が降りてくる
その時は魚のような意識で
ゆめの海底から顔を出す
まるで何も描かれていない
スケッチブックのような白さで



ふと 








自由詩 ふと Copyright マーブル 2012-08-20 01:34:45
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