路上画家の風景
ぎへいじ

イタリアの空を見上げた夏も、すでに思い出

大理石造りの建物の前で ニセ物のサングラスの束を売り歩く怪しげな商人がいたり

客を引き止めては 買えと迫る 石畳に並べられた絵はいんちき臭くて

なんとなく 印刷かなと思わせる作品で

似顔絵を描く若い路上画家も、そんな種類の仲間と変わりないのか

スラリとした足を組みながら 人の流れを眺めては

自分の前におかれた粗末な椅子に 客が座るのを待っていた。

少女が おかあさんにすすめられて 座る。

しだいに

女流画家の引くその薄茶色の線に魅せられた 群衆は
彼女と少女とキャンバスを囲み始め

私も 

絵が仕上がるまでのわずかな微笑の時間を楽しむ

少女が その絵を画家から渡され似顔絵を持ち去ると
人々は押し流されるように人波に吸い込まれて行った


新しい似顔絵の客が粗末なその椅子に座る。

何処からともなしに
再び人が集まって来て・・

ペンを持つ女流路上画家の生きいきと幸せそうな笑み
イタリアの空を見上げた夏の思い出





自由詩 路上画家の風景 Copyright ぎへいじ 2012-08-19 06:58:35
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