ゆいごん
蒼木りん

しあわせな夏の夜は
しあわせな夏の早朝へとつながっているけど
夏の昼間は焼け死んでしまう絶望さえ
わたしは家事をしなくてはと
ごまかして
人生を片付けていく

彼はまだ
今ごろ総武線に乗っている頃だろうか

雨が降ったり
寒かったり
人がすぐに死んでしまったり
隣のあの子がテレビに出たり
わたしは
ずっと風鈴の風になびく音を
蝉の止まない声を四十五回聴いた

救急車がよく通る病院につづく国道
電車がゆっくり走りだす眺めを
いつか
でなく
日陰に咲く小さい花として
ズルく
目立たなく
生きる

わたしの亡骸をお墓に終わないでください
蛛の糸で首を絞める












自由詩 ゆいごん Copyright 蒼木りん 2012-08-17 22:31:58
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